「環境と対話」研究会


地域と当事者を繋ぐ試み


 環境問題が起きている現場は、紛争の真っただ中にある。一つの地域をめぐって、多くの人たちが敵対関係に陥り、怒りや憎しみ、悲しみを胸の中に秘めている。
 かつての環境倫理学は、「私たちは環境問題にどう対応するべきか」という規範論が中心であった。そこでは、論理的に「何が正しいのか」が問われ、ある主張の正当性が明らかにされた。時には政策提言がなされ、法律が作られた。
 私はそれとは違う環境問題の論じ方を探したい。ある地域で環境問題が起きた時にあらわになるのは、その土地の歴史だ。紛争の中で、それまでの日常生活で連綿と続いてきた人々の関係が露出する。その意味で、環境について議論することは、地域について議論することである。
 私は2017年10月に日本生命財団環境問題研究助成・若手研究をうけ、「環境と対話」研究会を立ち上げた。メンバーは、大学院生、書店員、新聞記者、当事者運動に関わる人等、多様である。それと同時に、ほとんどの研究会は少人数で開催した。口コミだけで情報を伝え、外には伝わらない小さな声でボソボソと議論を重ねてきた。私が目指したのは、「自分と環境問題を繋ぐ試み」でもあったからである。

小松原織香「序文」(『環境と対話』第1号)

活動のあゆみ

第1期

第一回「環境と対話」研究会
「トルコの反原発運動: 市民運動の可能性」
講師:森山拓也(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程)

第二回「環境と対話」研究会
「人と自然の関係から考える環境教育ー外部者が地域にやって来ることー」
講師:笹川貴吏子(立教大学大学院社会学研究科博士後期課程)

第三回「環境と対話」研究会
「水俣病患者相談を通して」
講師:永野三智(水俣病センター相思社)

第四回「環境と対話」研究会
「環境問題と修復的正義 水俣地域の事例を通して」
講師:小松原織香(同志社大学嘱託講師)

第五回「環境と対話」研究会
「人間の内なる自然としての体内」
講師:広瀬一隆(京都新聞記者)

第六回「環境と対話」研究会
「水俣病フィールドワーク報告 茂道の暮らし」
講師:フィリッピ・ニコロ(カ・フォスカリ大学 文系学部文化人類学・民族学・社会言語学修士)

第2期

第七回〜第九回 読書会(2019年1月〜3月)
ピーター・シンガー『動物の解放』(戸田清訳、人文書院、2011年)

第十回 映画について語る会(2019年4月)
土本典昭監督『水俣 患者さんとその世界』(シグロ、1971年)

第十一回〜第十三回 読書会(2019年5月〜11月)
宇井純『自主講座 「公害原論」の15年』新装版(亜紀書房、2016年)

第十四回「環境と対話」研究会
「水俣にきた『よそ者』」
講師:小泉初恵(水俣病センター相思社)

第十五回「環境と対話」研究会
「石けん運動の過去と未来」
講師:大門信也(関西大学准教授)
コメンテーター:小泉初恵(水俣病センター相思社職員)、小西麗奈(川崎市民石けんプラント職員)

報告書

「環境と対話」第1号

【第1回報告】森山拓也「チェルノブイリの記憶と民主化への要求:トルコの反原発運動」

【第2回報告】笹川貴吏子「地域づくりにおける「当事者性」―「よりそい」と「介入」をめぐる自己の所在―」

【第3回報告】永野三智「報告に寄せて」

フィールドワーク報告
参加者の声
研究会の記録

「環境と対話」第2号

【調査報告】
小泉初恵「水俣にきた「よそ者」水俣生活学校と若者たち」
【エッセイ】
広瀬一隆「動物からのまなざし」           
【エッセイ】
米田量「回復を越えて: 躍動する生命へ至る思考」     
【詩】乙女傘「STAY HOME」               
【文献紹介(水俣病の英語文献)】
羽田孝之「Polluted Japan(1974)とKOGAI:Newsletter from Polluted Japan (1973-)」

フィールドワーク報告
研究会の記録